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更新日:2022年03月10日

国宝孝恩寺観音堂 令和の大修理 その5

木積(こつみ)にある孝恩寺では、本堂である観音堂(釘無堂)の保存修理工事が進められています。令和4年1月には、屋根瓦の葺(ふ)き替えや漆喰(しっくい)壁の塗り直しなどが終了し、工事中に観音堂の周囲を覆っていた素屋根(すやね)が解体され、外観の修理を終えた観音堂がその姿を現しています(表紙写真参照)。本号では、前号及び前々号(74・75号)で紹介した屋根の葺き替え工事と並行して進められてきた漆喰壁や観音堂内部の修理工事について紹介します。

漆喰壁の修理工事

木舞修理の写真

写真1 壁の下地となる木舞の修理

傷んだ漆喰壁は、壁土を全て落とし、下地となる木舞(こまい/割竹(わりたけ)を柱や貫(ぬき)などに縦横に取り付けて縄(なわ)で編んだもの)を残して解体していました。まず傷んでいた割竹や木舞縄を新しいものと交換した(写真1)後、壁の塗り直しが行われました。

荒壁付の様子

写真2 壁の塗り直し 荒壁付

壁の塗り直しは、まず、木舞に荒壁土(あらかべつち)を塗り上げる荒壁付(あらかべつけ)(写真2)、中塗土(なかぬりつち)を塗り上げる中塗(なかぬり)がそれぞれ乾燥期間を挟んで行われ、最後に消石灰(しょうせっかい)などを原料とした漆喰を塗り上げる漆喰塗(しっくいぬり)が行われ、真っ白な漆喰壁が復元されました。

観音堂内部の修理工事

観音堂内部は、床下の一部部材の補修や調査を行うため、外陣(げじん)の床板を全て解体していました。解体中には、内外陣の桟唐戸(さんからど)や蔀戸(しとみど)といった建具の修理などが行われた他、床下の大引(おおびき)や根太(ねだ)などの部材について、他の部材から転用された古い痕跡がないかといった調査や部材の年輪年代を測定する調査(これらの調査結果については現在分析中で、令和4年度に刊行予定の修理調査報告書に収録される予定です)も行われました。

埋木の様子

写真3 外陣床板の補修 埋木作業

床板は、まずきれいに洗浄された後、新しい木材を貼り合わせる矧木(はぎき)や穴の開いた部分を木で埋める埋木(うめき)(写真3)による補修が行われました。復旧にあたっては、床板を支える根太の一部が「令和元~三年度修補」の焼印が押された新しい材に交換され、高さ調整をしながら大引の上に設置されました。その上に床板が厚さ調整をしながら設置され、外陣の床が復旧されました。

外陣の床が復旧された後、建物の上部の柱などを修理するために内部に足場が仮設されました。また、内陣の仏壇廻りの黒漆塗(くろうるしぬり)が行われ、乾燥期間を挟んで、金箔の押直しも行われました。


※国宝孝恩寺観音堂の保存修理事業は令和4年7月で終了する予定です。

この記事に関するお問い合わせ先

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