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更新日:2020年05月28日

孝恩寺の仏像‐如来像1 釈迦如来坐像‐

貝塚市木積(こつみ)の孝恩寺には、平安時代の制作で地方色豊かな19躯(く)の仏像が安置されており、うち18躯が重要文化財に指定されています。今回は、如来像のうち釈迦如来像を紹介します。如来は修業によって悟りの境地に達して仏となったもので、頭部が隆起した「肉髻」(にっけい)や額の巻き毛「白毫」(びゃくごう)など32の身体的特徴を持っています。もともと如来は、仏教の開祖である釈迦如来のみでしたが、仏教が広まっていくなかで阿弥陀如来や薬師如来などの複数の如来が生み出されました。

木造釈迦如来坐像の写真

【重要文化財】木造釈迦如来坐像1躯


時代 平安時代後期
像高 89.0センチメートル
指定年月日 大正2年(1913年)4月14日


釈迦如来は、仏教の開祖である釈迦族(古代インドの地方の一部族)の王子「ゴータマ・シッダールタ」が悟りをひらいて仏となった姿です。

本像は、衲衣(のうえ)という一枚衣を偏袒右肩(へんたうけん:右肩をあらわにする着衣の形)に着し、右手は施無畏印(せむいいん:掌を正面にした手を上げる形)とし、左手は掌を上にして膝上に置き、右足を上に結跏趺座(けっかふざ:座禅を組んだときの足組みの形)する像です。

製作技法は一木造で、頭部および体部をカヤと思われる一木で彫り出し、坐像のため膝部は別材でつくられ、はぎ合わされています。また、後頭部、背面部、そして像底から内刳り(うちぐり:乾燥による干割れを防ぎ、重量を軽くするために内部を刳りぬくこと)をほどこし、空洞部分を隠すために後頭部と背面部には蓋板があてられています。

体部の奥行きが薄く、膝の高さも低くつくられるなど、全体的に量感を強調する傾向が少ないのが本像の特徴です。右肩や膝前にみられる翻波式衣文(ほんぱしきえもん:大波と小波を交互にあらわしたような木彫像の衣の表現)は浅く彫られ、本像の製作が10世紀代であることを示しています。また、像底からの内刳りが大きく、膝部の別材を腹部に刳り込むという10世紀後半以降に見られる技法を使用していることから、本像の製作期は10世紀後半以降と考えられます。

なお、本像の左手の形は薬壺を持つかのような形をしていることから、釈迦如来ではなく薬師如来の可能性があるのではないかという指摘があります。また現在、文殊菩薩立像と普賢菩薩立像を脇侍(きょうじ)として収蔵庫内に安置されていますが、この両像は本来天部像であるため、この三像は釈迦三尊として当初からセットで製作されたものではありません。

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