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更新日:2023年03月01日

和泉葛城山ブナ林は国の天然記念物指定100周年

ブナ林の位置関係の図

ブナ林の位置関係

国指定の経緯と指定後の概要、近年の取り組み
公益財団法人 大阪みどりのトラスト協会   石山 泰幸

ブナ林は山地などの涼しい地域を代表する森林です。「和泉葛城山ブナ林」は、太平洋側の、しかも標高800メートル前後の比較的高度の低い位置に分布しており、ブナ分布の南限圏に近い場所でこのような純林が存続することに大きな価値があるとして、大正12年(1923年)に国の天然記念物に指定されました。
その後、戦後から高度経済成長期を経て、周囲の森林の伐採、林道の開設、ハイキング道の拡張、キャンプ場の利用など、ブナ林をとりまく環境は大きく変化しました。昭和後期には、登山者・観光客が増加し、薪などに使う落枝を集めるためブナ林に入るキャンプ客や、林内でバイクを走らせる者も見られました。これに加えて、和歌山県側から吹き上げてくる風が林内に侵入してブナ林を乾燥させていることや、大木の枯死が増加する一方で若木が育たないことなどから、ブナ林は危機的な状態であると考えられました。

コアゾーンとバッファゾーンの図

コアゾーンとバッファゾーン

これに対応するため、昭和63年度(1988年度)、文化庁、大阪府、地元の貝塚市、岸和田市は、学識経験者、行政、地元教育委員会などからなる「国指定天然記念物和泉葛城山ブナ林保護増殖調査委員会」(平成5年(1993年)7月~名称変更、「和泉葛城山ブナ林保護増殖検討委員会」)を組織し、ブナ林の保護と増殖のための調査が行われました。その結果に基づき、中心となる天然記念物のブナ林をコアゾーンとして保全すると同時に、周辺の森林を緩衝樹林帯(バッファゾーン)として管理しつつ、徐々にブナ林に誘導していくという基本方針が示されました。
これを受け、公益財団法人大阪みどりのトラスト協会※1が保全活動団体「和泉葛城山ブナ愛樹クラブ」※2などと連携し、保護増殖検討委員会の指導・助言のもと、バッファゾーンにおける約3,500本のブナ若木の植栽や林内若木の育成作業、ブナ個体調査・植生調査・現状記録などの各種調査、シンポジウムや観察ハイキングなどの普及啓発活動などを行い、現在に至っています。
引き続き、和泉葛城山ブナ林を適正に保全し、次世代へ確実に継承していくためには、関係者が歴史・自然・社会の各側面からその価値を共有し、長期的な視野・計画をもって事業に取り組むことが重要です。そのため、令和3年(2021年)3月には、保護増殖に関する取り組みの方向性をとりまとめた「和泉葛城山ブナ林 10ヵ年計画(令和3年度~令和12年度)」※3が策定されました。同計画では、コアゾーン、バッファゾーンにおける計画的な保全管理のあり方とともに、管理体制の確立や適切な利活用の誘導など保護増殖活動のすそ野を広げるための取り組みの重要性についても言及されています。貝塚・岸和田の両市民をはじめ、関係する様々な主体が本計画を共有し、和泉葛城山ブナ林の確実な保護増殖につながることが期待されます。

 

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