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国宝孝恩寺観音堂 令和の大修理 その5
修理工事でわかった建立当時の木材の加工方法
鎌倉時代後期に建立されたといわれる孝恩寺観音堂ですが、柱や板の中には、建立当時の加工の痕跡が見られる部材があることが修理工事で明らかになりました。
写真4 打ち割りの痕跡がある部材
原木から柱や板を製材するには、現在は縦挽(たてび)きのノコギリ(鋸)で加工しますが、鎌倉時代には、木を切る時に使用する横挽(よこび)きのノコギリしかありませんでした。木を縦方向に加工するには、ノミ(鑿)やクサビ(楔)を使って打ち割る方法でした。写真4は、打ち割りの痕跡がある部材です。
写真5 チョウナの痕跡がある部材
当時の柱の表面を加工したのは、チョウナ(釿)という柄(え)に対して直角に刃が付くヨコオノ(横斧)で、木の表面を粗く加工していました(写真5)。
写真6 ヤリガンナの痕跡がある部材
さらに表面をきれいにしたのはヤリガンナ(鉇)という槍の穂先に似た刃を木製の柄につけた工具で、木材の表面を削って仕上げていました(写真6)。
これらの加工の痕跡は、いずれも建立当時のものです。時代によって使用する大工道具が変わることから、痕跡を観察することで、加工の方法や時代を読み取ることができます。明らかになった成果を参考に修理工事は進められています。
貝塚市郷土資料展示室特別展「国宝孝恩寺観音堂(釘無堂) 令和の大修理2」
保存修理事業の進捗状況を中心に、孝恩寺に残る文化財などについて紹介します。

孝恩寺観音堂板図(大正時代)
会期:令和4年3月10日(木曜日)から4月24日(日曜日)
会場:貝塚市郷土資料展示室(貝塚市民図書館2階)
観覧料:無料
休室日:毎火曜日、3月21日(月曜日)、3月31日(木曜日)
令和3年度貝塚市郷土資料展示室特別展図録 「国宝孝恩寺観音堂(釘無堂) 令和の大修理2」刊行のお知らせ

特別展図録(表紙)
上記特別展の展示図録を刊行いたします。本書は、「国宝孝恩寺観音堂」の過去の修理に関する資料や保存修理事業の写真などの図版を掲載した展示解説の図録です。
お求めは社会教育課または郷土資料室まで
令和4年3月12日発行
A4判32ページ 1部300円

特別展図録(5ページ)
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更新日:2022年03月10日