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更新日:2021年06月10日

国宝孝恩寺観音堂 令和の大修理 その3

傷んだ野地板をはがして垂木が見えている状況の写真

傷んだ野地板をはがして垂木が見えている状況

本市木積(こつみ)にある孝恩寺では、本堂である観音堂(通称 釘無堂(くぎなしどう))の保存修理工事が進められています。令和2年12月から令和3年1月にかけて、瓦を葺(ふ)く準備として、垂木(たるき)の取替えや野地板(のじいた)の貼り直しなどの屋根に使われている木材の修理の後、雨漏りを防ぐ板葺き工法の土居葺(どいぶ)きが設置されました。今号では、令和3年2月上旬から始まった屋根瓦を葺く工事の概要を紹介します。

瓦座(かわらざ)と桟木(さんぎ)の取り付け

軒平瓦(のきひらがわら)を葺くために、軒先に瓦の形にあわせて波のような形をした瓦座が取り付けられました。次に、土居葺きの上に瓦を固定するための桟木が、一定の距離を開けて、横方向、縦方向の順で取り付けられました。横方向の桟木は、土居葺きの薄い板と野地板の下にある垂木まで届く長い釘を使って固定されています。釘を打つ目安として、垂木のある位置に墨で線が引かれました。また、縦方向の桟木は、平瓦の幅に合わせて、横方向の桟木の上に短い釘で打ち付けて固定されました。

軒先に瓦座が取り付けられ、側面(東面、画面右側)の屋根には垂木の位置に墨で線が引かれている写真

軒先に瓦座が取り付けられ、側面(東面、画面右側)の屋根には垂木の位置に墨で線が引かれています

背面(北面、画面左側)の屋根は桟木の取り付けが終わり、側面(西面、画面右側)の屋根の取り付けが進められている様子

背面(北面、画面左側)の屋根は桟木の取り付けが終わり、側面(西面、画面右側)の屋根の取り付けが進められています

軒平瓦(のきひらがわら)、平瓦(ひらがわら)を葺く

軒平瓦が葺かれている様子

軒平瓦の下には加工された平瓦と葺土が見えます

瓦葺きはまず、軒平瓦、平瓦の順で行われました。軒平瓦は、瓦座に合わせて短く加工した平瓦を置き、その上に葺いていきました(下部写真)。軒平瓦と軒より上の屋根部分の平瓦は、葺土(ふきつち/粘土にワラを入れて発酵させたもの)が使用されています。
近年の文化財の修理では、地震に強い建物にする目的で屋根にかかる荷重を軽減するため、瓦は葺土を使わない空葺きを採用しています。空葺きの場合、瓦を固定するため瓦に穴をあけるなどの加工が必要となります。

葺かれていく軒平瓦の様子

葺かれていく軒平瓦

しかし、孝恩寺観音堂は、耐震診断で補強が不要との判定が出ており、土葺きでも影響ないと診断されています。今回の修理では平安時代や鎌倉時代の古い瓦を再利用すること、瓦の強度を高めるために樹脂で補強している瓦もあることから加工は難しく、土葺きが採用されました。ただし、軒部分については荷重を軽減することで軒の下がりなどを防ぐために空葺きが採用されることになりました。
古い瓦の再利用については、1.正面(南面)の軒先と2.軒より上の屋根部分、3.背面(北面)の軒より上の屋根部分の3ヵ所に江戸時代以前の瓦が、側面(東西の面)には大正時代の瓦が再利用されています。また、今回新しく焼かれた瓦は、正面の軒と背面の軒・屋根の一部に葺かれています。

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