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孝恩寺の仏像 菩薩2 虚空蔵菩薩
貝塚市木積(こつみ)の孝恩寺には、平安時代の製作で地方色豊かな19躯(く)の仏像が安置されており、うち18躯が重要文化財に指定されています。今回は、菩薩のなかから虚空蔵菩薩立像(こくうぞうぼさつりゅうぞう)を紹介します。
虚空蔵菩薩立像

聖観音立像
重要文化財 木造 虚空蔵菩薩立像 1躯
時代
平安時代後期(10世紀)
像高
169.0センチメートル
指定年月日
1913年(大正2年)4月14日
虚空蔵菩薩は、広大無辺の知恵と福徳を虚空のごとく持つとされる菩薩で、日本では知恵をつかさどる仏として古くから信仰されてきました。
虚空蔵菩薩像は、半伽(はんか)像や坐像が一般的ですが、本像は頭部には三山冠(さんざんかん)という冠をいただき、体部にはがい襠衣(がいとうい)とよばれる衣服を着た、天部の形をした像としてあらわされています。そのため、虚空蔵菩薩として信仰されてきましたが、もともとは天部像として造られた可能性がある像です。
本像の特徴は、テンプス42号で紹介した聖観音立像(しょうかんのんりゅうぞう)(写真右上)と作風が似ていることです。カヤかと思われる一木造で、彩色仕上げとしている技法上の共通性はもちろん、ほぼ同じ像高で、身体のプロポーションも酷似しています。また、肉付きの良い童顔にあらわされた面部の各部の特徴、なで肩で寸胴気味の体部の表現、菩薩の襟や観音の天衣(てんね)のふちなどに見られる粘りのある緩やかな曲線の表現など、さまざまな部分に共通性が見られます。おそらく、この二像は同一工房の製作と思われ、同一作者の可能性も考えられます。
半伽像
仏像彫刻で、台座に腰掛け、左足を垂らし、右足は左足の膝の上にのせる姿のもの。
天部
仏教の成立以前からインドにあった古代宗教の神々を仏教に取り入れて守護神としたもの。
天衣
仏像彫刻で、肩から垂らしている薄く細長い布のこと。
(注意)本像は現在、天王寺公園内にある大阪市立美術館において収蔵・展示されています。
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更新日:2020年05月28日