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更新日:2013年12月06日

孝恩寺の仏像 -菩薩1 弥勒菩薩- 

木造弥勒菩薩坐像

貝塚市木積(こつみ)の孝恩寺には、平安時代の制作で地方色豊かな19躯(く)の仏像が安置されており、うち18躯が重要文化財に指定されています。今回は、菩薩のなかから弥勒菩薩坐像を紹介します。
 

【重要文化財】木造 弥勒菩薩坐像 1躯

時代 平安時代前期(9世紀前半)
像高 85.7センチメートル
指定年月日 1913年(大正2年)4月14日

弥勒菩薩は、弥勒の浄土とよばれる兜率天(とそつてん)で修業をしており、釈迦入滅(じゅめつ)の56億7千万年後の未来に姿をあらわして、衆生(しゅじょう)を救済するといわれる未来仏です。

本像は、頭部には肉髻(にっけい)をあらわし、通肩(つうけん)の上に偏袒右肩(へんたんうけん)の着衣をまとい、両手を胸前にして掌(てのひら)を見せ、左右とも第一・三指を結び、右足を前にして結跏趺坐(けっかふざ)しています。印相(いんぞう)は中品中生(ちゅうぼんちゅうしょう)印という阿弥陀如来に特徴的なものであることから、本来は阿弥陀如来像として作られたのではないかという意見もあります。

頭部と体部は両手袖口までを含んでカヤの一材で彫り出し、頭部の螺髪(らほつ、現在脱落)・両手先・膝前は別材で、全身に黄土彩を施しています。後頭部と背中には内刳(うちぐ)りを施して、それぞれ蓋板をあてています。

面部は眼鼻を大きめにあらわして、芒洋(ぼうよう)とした表情をもち、肩を張った体部は量感豊かで、衣文(えもん)の彫りは粗くかつ深く、全体に重厚な印象を与えています。和泉地方を代表する9世紀初めの優れた仏像彫刻です。


・入滅:人間の迷いを捨てて悟りの境地に入ることで、特に釈迦の死を指す。
・衆生:生きとし生けるもの。
・肉髻:如来の身体的特徴の一つで、頭部の盛り上がった部分のこと。
・通肩:二枚の布を体に巻きつけて両肩を包む着衣方法の一つ。
・偏袒右肩:右肩をあらわにする着衣の形。
・結跏趺坐:足の甲で左右それぞれ反対側のももを押さえる形の座り方。
・印相:仏や菩薩のもつ内面的な意思をあらわす手や指の組み方。
・螺髪:如来の身体的特徴の一つで、巻き毛状になった髪のこと。
・内刳り:木彫像において、木の干割れを防ぎ、重量を軽減するために木心を除くこと。
・芒洋:広々として限りないさま。
・衣文:彫刻などにおいて人物などの体に動きによって生じる衣服の線のこと。

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