第1章 計画策定にあたって   1 計画策定の目的 本市では、地域におけるさまざまな福祉課題に対応するため、国の動向や社会福祉法の理念を踏まえ、平成17年度(2005年度)に『ふれあい ささえあい あんしん かいづか』を基本理念とした「貝塚市地域福祉計画」を策定しました。また、平成29年度(2017年度)には、『魅力かがやき ふれあい ささえあう 貝怐xを基本理念とした「第3次貝塚市地域福祉計画」を策定し、高齢・障害・子ども子育て・生活困窮・人権・災害といった各種福祉課題に対し、社会福祉協議会や地域団体等との連携のもと、福祉サービスの整備・充実や地域住民・福祉事業者などの主体的な福祉への取組支援な どの施策を進めてきました。 この間、高齢・障害・子ども子育て・生活困窮のうち、複数の福祉分野にまたがる問題を抱える人・世帯が出てきており、従来通りのサービスでは解決できない課題が増えてきています。また、少子高齢化の進行や家族形態の変化、地域社会の変容などにより、環境は大きく変化し、孤立死や引きこもり、家庭内での児童・高齢者及び障害のある人等への虐待、DVの増加など、さまざまな課題が発生し、深刻な問題となってきています。さらに、経済不況や雇用形態の多様化が及ぼす、所得格差のひろがり等による生活困窮者対策や、災害時の要支援者対策等の課題への対応も求められています。 国は、こうした地域住民の複雑化・複合化したニーズに対応する市町村の包括的な支援体制を構築するため、相談支援、参加支援、地域づくりに向けた支援を一体的に実施する「重層的支援体制整備事業」を創設しました。本市においても、課題を抱えた住民を適切な支援・サービスにつなげるため、市独自の重層的支援体制の構築を進めています。また、生活課題や地域課題、上記のような複合的な課題に対応するためには、公的なサービスの充実だけではなく、地域の支えあいの基盤を強化する必要があります。住民同士が地域でのつながりを再び取り戻しつつ、「地域共生社会」の実現に向けた地域づくりを推進していくことが求められています。 このたび、令和4年度(2022年度)末に計画期間が終了することを受け、社会情勢の変化や、新たに発生している諸課題に対応するため、本市における課題を再度整理し、重層的支援体制の整備と地域のつながりづくりを目指した、「第4次貝塚市地域福祉計画」(以下、「本計画」)を策定します。本計画では、総合計画に示された将来像の実現と、『地域共生社会の実現に向けた取組の推進』という目的のため、本市における地域福祉推進の基本的方向性を明らかにしていくものとします。 2 地域福祉の推進に向けて (1)地域福祉とは? 「地域福祉」とは、住民一人ひとりが抱える生活上のさまざまな課題を、自分たちが住んでいる地域という場所を中心に考え、住民、地域の各種団体、ボランティア、福祉サービス事業者、行政などが連携し、だれもが住み慣れた地域でいきいきと安心して暮らせるまちづくりを進めていこうとする取組のことをいいます。 日頃身の回りで起こる問題はまず個人や家庭の努力で解決し(自助)、個人や家族内で解決できない問題は隣近所と協力して解決するか(互助)、保険制度等の組織的な支えあいの力で解決し(共助)、地域で解決できない問題は行政の力(公助)で解決するといった、重層的な取組が必要となってきます。 公的な制度による福祉サービスと、住民相互の助けあい支えあい活動、ボランティア活動等のさまざまな取組を、支援を必要とする人に応じて組み合わせることで、個々人の力だけでは解決が難しい課題であっても、解決への可能性が大きく広がり、「このまちに住んでよかった、住み続けたい」と実感できる福祉のまちづくりを実現することができます。  下図では、中心を個人・家族とし、自分と福祉に関わる各関係機関との距離を表しています。さまざまな人や組織が連動・協働し、つながりながら支えあうことが地域福祉の推進につながります。   (2)「地域共生社会」とは? 昨今では、80代の親が50代のひきこもりの子どもの世話をする「はちまるごーまる問題」や、育児と介護を同時に担う「ダブルケア」による子育て世帯への負担の集中、子どもが親族のケアを行うことで勉学や交流の時間が奪われる「ヤングケアラー」の問題、地域での人と人とのつながりが希薄化して経済的に困窮する「孤独・孤立」の問題など、従来の福祉サービスでは対応が難しい複合的な課題が出てきています。 「地域共生社会」とは、人々がこうしたさまざまな地域生活課題を抱えながらも、住み慣れた地域で自分らしく暮らしていけるよう、地域住民等が支えあい、一人ひとりの暮らしと生きがい、地域をともにつくっていくことのできる社会を表しています。これを実現するためには、上記の「ダブルケア」や「ヤングケアラー」などのような制度・分野ごとの「縦割り」では解決できない課題(狭間の課題)の存在や社会的孤立・社会的排除に対応する体制整備などを進める必要があります。 地域共生社会とは 制度・分野ごとの「縦割り」や「支え手」「受け手」という関係を超えて、地域住民や地域の多様な主体が「我が事」として参画し、人と人、人と資源が世代や分野を超えて「丸ごと」つながることで、住民ひとりひとりの暮らしと生きがい、地域をともに創っていく社会 (3)コロナ禍における影響 令和がん年度(2019年度)末頃から新型コロナウイルス感染症が世界的に広がるなか、感染防止のために、人と人とが距離を取り、接触する機会を減らすことが求められました。これにより、これまで進められてきたさまざまな地域活動や支援が中止や規模縮小を余儀なくされ、地域のつながりが希薄化しています。つながりという支えを失うことにより、生活課題を抱えた人はSOSをうまく発信できず、潜在化する恐れがあり、孤独・孤立等の問題がより深刻化しています。また、外出機会の減少による高齢者等の心身の機能低下も懸念されています。 これまでのつながりを絶やさず、また、今まで以上に深刻な状況に陥っている人に手を差し伸べるためにも、基本的な感染防止対策を徹底・継続しつつ、「ウィズコロナ」での新たな価値観・生活様式に対応したサービスのあり方や地域活動の進め方を考えていく必要があります。 3 計画の位置づけ (1)地域福祉計画の法的な位置づけ 本計画は、社会福祉法第107条の規定に基づく「市町村地域福祉計画」に該当し、地域福祉のあり方や地域福祉推進のための基本的な施策の方向を定めるものです。市町村地域福祉計画の策定については、平成30年度(2018年度)4月の改正社会福祉法の施行により、任意とされていたものが努力義務とされ、「地域における高齢者の福祉、障害者の福祉、児童の福祉、その他の福祉の各分野における共通的な事項」を記載する、いわゆる福祉分野の「上位計画」として位置づけられました。 また、市町村では、「成年後見制度の利用の促進に関する法律」に基づく「成年後見制度利用促進計画」と「再犯の防止等の推進に関する法律」に基づく「地方再犯防止推進計画」の策定が求められていることから、本計画は、その内容を包含するものとします。 (2)他計画との関係 本計画は、市政の基本方針を示す「第5次貝塚市総合計画」と「貝塚市強靭化地域計画」を最上位計画としており、本市における福祉の分野別計画には、高齢者福祉計画・介護保険事業計画、障害者計画・障害福祉計画・障害児福祉計画、子ども・子育て支援事業計画、健康かいづか21などがあり、それぞれの根拠法に基づき策定されています。本計画は、福祉の基盤となる計画として、これらの計画と連携し、地域福祉の推進に関する取組が地域においてより効果的に展開されるよう、本市の地域福祉施策の基本理念や、施策展開の方向性を明確にするものです。 また、貝塚市社会福祉協議会が策定する「貝塚市地域福祉活動計画」にて、具体的な取組を進めています。貝塚市地域福祉活動計画と本計画とが車の両輪となって連携することで、地域福祉の推進を図っていきます。 (3)計画の期間 本計画の期間は、令和5年度(2023年度)から令和9年度(2027年度)までの5年間とします。 なお、社会経済情勢や制度改正など、地域の状況が大きく変化した場合には、必要に応じて計画期間中においても見直しを行うこととします。 (4)圏域の設定 本計画は、本市の地域福祉を推進するための「基本的計画」として、全市的に展開されることが望ましい推進方策について、主に取り扱うこととします。 実際に施策を進める際の範囲のうち、地域における支えあい、福祉活動等については、おおむね小学校区を基本とする「地区」ごとに取組を進めていくものとします。 また、公的なサービスのうち、介護保険事業計画や子ども・子育て支援事業計画に関わる施策については、市内を「浜手」「中央」「山手」の3圏域に区分し、日常生活圏域や教育・保育提供区域を設定します。 4 計画の策定体制 本計画の策定にあたっては、市民アンケート調査や地区福祉委員会へのヒアリング調査等により地域福祉に関する現状を把握し、住民や関係機関・団体の代表などで構成する地域福祉計画策定委員会において計画内容の検討・審議を行いました。 また、策定過程において計画案を公表し広く意見を求めるため、住民からの意見募集(パブリックコメント)を実施しました。