第2次人権教育基本方針 はじめに 貝恷sでは、1994(平成6)年12月に「差別のない明るく住みよい国際都市貝恷s」の実現をめざし、「貝恷s人権擁護に関する条例」を施行しました。そして、この条例の具体化に向け、1997(平成9)年3月には「貝恷s人権啓発基本方針」及び「貝恷s同和行政基本方針」を策定しました。さらに、2005(平成17) 年4月には「貝恷s人権行政基本方針」を策定し、人権が尊重されるまちづくりに取り組んできました。また、2016(平成28)年度に策定した第5次貝恷s総合計画においても、10年後の目標を「全ての人の人権が尊重され、差別のない社会を築く意識が市民に浸透し、地域・事業者が主体的にあらゆる人権課題の解決に取り組んで、人権尊重の視点に立ったまちづくりが行われている」こととし、2023(令和5)年4月には個人の価値観の多様化と社会情勢の変化を踏まえた「第2次貝恷s人権行政基本方針」を策定し、12の個別課題をあげてそれぞれに関わる取組みを示す等、一人ひとりの人権が尊重される社会の実現をめざしています。 貝恷s教育委員会は、憲法、教育基本法の理念及び「同和対策審議会答申」並びに大阪府の「同和教育基本方針」の意義を踏まえて、1969(昭和44)年「貝恷s同和教育基本方針」を策定し、学校教育、社会教育において、国民的課題である同和問題の解決に向け、積極的に同和教育を推進してきました。同和問題解決への取組みは、女性、障がい児・障がい者、在日外国人など様々な人権課題解決への取組みへと発展し、2000(平成12)年3月に「人権教育基本方針」の策定に至りました。この基本方針では、「貝恷sにおける人権尊重の教育・啓発の推進に同和教育が果たしてきた役割は大きいが、同和問題をはじめとする様々な人権問題解決に向けては、なお課題は多い」という課題と方向性を述べています。さらに2005(平成17)年9月には「平和教育基本指針」、2006(平成18)年8月には「在日外国人問題に関する教育指針」を相次いで策定し、人権教育の充実に向けて積極的に取り組んできました。 現在、学校教育においては、子どもたちが仲間づくりや人間関係づくりの力を身につけ、豊かな人権感覚と人権問題の解決に向けた実践意欲をもって成長するよう、日々取組みを推進しています。また社会教育においては、人権及び人権問題について、市民の理解と認識を深めるための学習機会を提供し、啓発を進めています。 しかしながら、現代社会において、人権侵害は広がっていると言わざるを得ません。特に新たに注目されている重要な課題として、いじめ、児童虐待、ヤングケアラー等子どもの人権をはじめ、生命感覚の希薄さ、高齢者の権利侵害、ジェンダーバイアス(性差による偏見)などやインターネットによる人権侵害・誹謗中傷など、解決すべき人権課題が多種多様に生じていることを踏まえ、本市教育委員会として、これまで以上に家庭・学校・地域が連携・協働し、人権尊重の教育をさらに充実・発展させていく必要があるという考えから、本市教育委員会は、「第2次貝恷s人権教育基本方針」を策定するものです。 2024年(令和6年)2月 第2次貝塚市人権教育基本方針 世界が経験した第2次世界大戦の反省のうえに、1948(昭和23)年12月の第3回国際連合(以下「国連」という)総会において、「世界人権宣言」が採択されて以降、人種差別撤廃条約や国際人権規約をはじめとする、様々な人権に関する国際基準や条約が採択されました。この潮流のなか、1994(平成6)年12月の国連総会で、1995年から2004年を「人権教育のための国連の10年」と定めることが決議されました。この10年を経て、2004年12月の第59回国連総会で、段階的に人権教育の取組みを進める「人権教育のための世界計画」が採択されました。現在は「第4フェーズ行動計画」にまで計画が推進され、若者に焦点をあてた取組みが進められています。この第4フェーズでは、特に包括的で平和な社会を築くことを目的として、「平等」、「人権と非差別」、「包摂、並びに多様性の尊重に関する教育及び研修」に重点を置いています。この世界計画はまた、2015(平成27)年9月第70回国連総会において採択された、SDGs、つまり「我々の世界を変革する:持続可能な開発のための2030アジェンダ」とも連動しています。SDGsでは、協同的なパートナーシップのもと、人権、人の尊厳、平等及び差別のない世界をめざして、国際社会全体が「誰一人取り残すことなく」達成すべき17の目標と169の行動指針(Sustainable Development Goals:以下「SDGs」という)が示されました。 わが国においても、「国民主権」「平和主義」「基本的人権の尊重」を基本原理とする「日本国憲法」のもと、人権が尊重される社会の形成に向けて様々な取組みがなされてきました。2000(平成12)年施行された「人権教育及び人権啓発の推進に関する法律」第7条に基づき、2002(平成14)年には文部科学省により、「人権教育・啓発に関する基本計画」が策定されました。この計画は、2004(平成16)年の「人権教育の指導方法等の在り方について〜第一次とりまとめ」につながり、第二次、第三次へと引き継がれ、学校における人権教育の重要な基盤となっています。また、2016(平成28) 年には「障害を理由とする差別の解消の推進に関する法律(障害者差別解消法)」、「本邦外出身者に対する不当な差別的言動の解消に向けた取組の推進に関する法律(ヘイトスピーチ解消法)」、「部落差別の解消の推進に関する法律 (部落差別解消推進法)」が相次いで施行されました。さらに、2019(令和元)年には「アイヌの人々の誇りが尊重される社会を実現するための施策の推進に関する法律(アイヌ民族支援法)」、「ハンセン病元患者家族に対する補償金の支給等に関する法律(ハンセン病元患者家族補償法)」、「日本語教育推進法」が制定され、2023(令和5)年には「性的指向及びジェンダーアイデンティティの多様性に関する国民の理解の増進に関する法律(LGBT理解増進法)」や「こども基本法」が施行されました。これらの法律の施行は、従来の被差別者救済の取組みから、差別が存在する社会の在り方自体を変え、差別解消をめざすという方向転換となりました。 すべての人々の命の尊厳と基本的人権の尊重は、民主的な社会の根幹をなすものです。人権が尊重される社会の実現には、すべての人々が人権の意義を理解し、人権課題を自分ごととして捉え、考え、行動することが必要です。人権が尊重され誰もが自分らしく生きることのできる社会は、人々のたゆまぬ努力によって達成されるものです。 貝恷s教育委員会は、憲法及び教育基本法並びに大阪府、本市の人権擁護推進に係る基本方針、行動計画等、そして「誰一人取り残さない」社会の実現を目標としたSDGsを踏まえ、教育分野における人権教育を推進するための基本方針を次のとおり定めます。 1.あらゆる場で豊かな人権教育を 人権及び人権問題に関する正しい理解を深め、主体的な思考力、判断力を身につけ、自分ごととして人権問題を捉え、解決に積極的に取り組むとともに、社会の構成員としての責任を自覚し、豊かな人権感覚と人権課題解決に向けた行動力をもつ人間の育成をめざして、教育のあらゆる場において人権教育を推進する。 2.実態把握をふまえて 人権問題が社会の変化とともに様々な形で新たに発生する可能性のある問題であることを踏まえ、その実態把握に努めるとともに、すべての人々の自立、自己実現、豊かな人間関係づくりが図られるよう人権教育を推進する。 3.熱意ある人材の育成 人権教育を推進するため、人権及び人権問題に関する深い認識とそれに基づいた実践力を身につけた熱意ある人材の育成を図るとともに、その人材が、人権教育・学習の充実に向け活躍できる機会・場の提供に努める。 4.家庭・学校・地域の連携・協働を大切に 市民一人ひとりが主体的に、様々な学習活動を通じて、人権及び人権問題に対する正しい理解と認識を深め、多様な文化・習慣・価値観等をもつ人々が互いを尊重し、それぞれのアイデンティティを保ち、豊かな社会生活を送ることができるよう、家庭・学校・地域が連携・協働し、人権教育・学習の充実を図る。 5.教育が主体性をもって総合的に 人権教育の実施にあたっては、教育の主体性を保ち、学校教育と社会教育の連携を図るとともに、関係諸機関及び諸団体とそれぞれの役割を分担しつつ、総合的に推進する。