1ページ 第1章 計画策定にあたって                     1.計画策定の背景と趣旨  わが国が抱える少子化の問題は年々深刻度を増し、急速に進行しています。厚生労働省が公表した人口動態統計では、令和5年の合計特殊出生率は1.20と、前年の1.26より低下しており、過去最低記録を更新しました。一方で、夫婦が実際に産む子どもの人数の平均と、夫婦が理想とする子どもの人数の平均との間には開きがみられ、その理由として、子育てに関する不安感や、仕事と子育てとの両立に対する負担感があることが指摘されています。また、女性の社会進出に伴う低年齢時からの保育ニーズの増大、核家族化の進行や地域のつながりの希薄化を背景とした子育て不安を抱える保護者の増加など、子育てをめぐる地域や家庭の状況は変化し続けています。  このような状況を踏まえ、国では、子育て世帯を支援し、子どもの権利を守るため、令和5年(2023年)4月にこども家庭庁が発足し、「こども基本法」が施行されました。「こども基本法」に基づき「こども大綱」が発表され、子どもに関する施策を総合的に推進し、すべての子どもや若者が身体的・精神的・社会的に幸せな状態(ウェルビーイング)で生活を送ることが目指されました。また、令和6年(2024年)6月に「子ども・子育て支援法等の一部を改正する法律案」が成立し、ライフステージを通じた子育てに係る経済的支援の強化、全てのこども・子育て世帯を対象とする支援の拡充、共働き・共育ての推進に資する施策の実施に必要な措置を講じるとともに、こども・子育て政策の全体像と費用負担の見える化を進めるための子ども・子育て支援特別会計を創設し、児童手当等に充てるための子ども・子育て支援金制度が創設されることになります。  貝塚市(以下「本市」という。)では、子どもの貧困対策の推進に関する法律に基づく市町村行動計画を包含した「第2期貝塚市子ども・子育て支援事業計画」(以下「第2期計画」という。)を令和元年度(2019年度)に策定し、市民、地域、行政の協働による子育て環境の整備・充実に取り組んできましたが、この度、第2期計画が令和6年度(2024年度)末をもって終了することから、第2期計画での取組の成果と課題をはじめ、子育て家庭の子ども・子育て支援に関するニーズ、子どもの貧困対策や児童虐待防止の強化などの社会的な要請などを踏まえ、令和7年度(2025年度)から令和11年度(2029年度)までの5年間を計画期間とした 「第3期貝塚市子ども・子育て支援事業計画」(以下「本計画」という。)を策定するものです。 2.関係法令等の動向 (1)国の動き 「子ども・子育て関連3法」の成立(平成24年(2012年)8月)  国では、従来の子育て支援施策の考え方から一歩進め、保護者が子育てについての第一義的責任を有するという基本認識のもとに、幼児期の学校教育・保育、地域の子ども子育て支援を総合的に推進する趣旨で「子ども・子育て関連3法」を発布し、この3法の成立に伴い、各行政での地域施策を計画するように定めています。 2ページ 「次代の社会を担う子どもの健全な育成を図るための次世代育成支援対策推進法等の一部を改正する法律」の施行(平成26年(2014年)4月)  「次世代育成支援対策推進法」は、平成26年度末(2014年度末)までの時限法として制定されましたが、ひとり親家庭への支援を拡充するとともに、社会問題化している子どもの貧困対策に対応するため、母子及び寡婦福祉法を含む、「次代の社会を担う子どもの健全な育成を図るための次世代育成支援対策推進法等の一部を改正する法律」として改正されました。引き続き、子どもが健やかに生まれ育まれる環境を一層充実させるため、有効期限を10年間延長(令和7年(2025年)3月31日まで)しています。 「改正児童福祉法」の公布(平成28年(2016年)6月3日)  「改正児童福祉法」は、すべての児童が健全に育成されるよう、 児童虐待について発生予防から自立支援まで一連の対策の更なる強化等を図るため、児童福祉法の理念が明確化されました。また、子育て世代包括支援センターの法定化、市町村及び児童相談所の体制の強化、里親委託の推進等の所要の措置を講ずるよう定められました。 「子育て安心プラン」の公表(平成29年(2017年)6月)  「子育て安心プラン」は、待機児童解消に必要な受け皿を整備するため、約22万人分の予算を平成30年度(2018年度)から令和元年度末(2019年度)までに確保し、遅くとも令和2年度末(2020年度末)までに全国の待機児童の解消を目標とすること、また、「M字カーブ」を解消するため、平成30年度(2018年度)~令和4年度末(2022年度末)までの5年間で女性就業率を80%にすることを目標としています。これらを柱として「6つの支援パッケージ」(保育の受け皿の拡大、保育の人材の確保、保護者への育児支援、保育の質の確保等)を設定し、すべての人が無理なく子育てと仕事を両立できる社会を目指すこととしています。 「子どもの貧困対策の推進に関する法律の一部を改正する法律」の公布(令和元年(2019年)6月)  「子どもの貧困対策の推進に関する法律」は、議員立法の法律案として提案され、衆・参両院のすべての政党の賛成のもとに、平成25年(2013年)6月に成立、平成26年(2014年)1月から施行され、その後、令和元年(2019年)6月に「子どもの貧困対策の推進に関する法律の一部を改正する法律」として公布され、貧困対策が子どもの「将来」だけでなく「現在」に向けた対策であることや、貧困解消に向けて児童の権利条約の精神に則り推進することなどが明記されています。   「幼児教育・保育の無償化」の施行(令和元年(2019年)10月)  保育所や幼稚園、認定こども園等に通う3~5歳のすべての子どもと、0~2歳の住民税非課税世帯の子どもについて、利用料を無料とする制度が令和元年(2019年)10月から開始されました。 「新子育て安心プランの」の発表(令和2年(2020年)12月)  「新子育て安心プラン」は、令和3年度(2021年度)から令和6年度(2024年度)末までの4年間で約14万人分の保育の受け皿を整備し、待機児童の解消を目標としています。 3ページ 「こども基本法」の施行(令和5年(2023年)4月)  「こども基本法」は、次代の社会を担うすべてのこどもが、生涯にわたる人格形成の基礎を築き、自立した個人としてひとしく健やかに成長することができ、こどもの心身の状況、置かれている環境等にかかわらず、その権利の擁護が図られ、将来にわたって幸福な生活を送ることができる社会の実現を目指して、こども政策を総合的に推進することなどが明記されています。 「こども未来戦略方針」の閣議決定(令和5年(2023年)6月)  「こども未来戦略方針」では、「若い世代の所得を増やす」「社会全体の構造・意識を変える」「全てのこども・子育て世帯を切れ目なく支援する」という 3項目を基本理念として掲げており、その上で、それらの理念の実現に向けて、3年間を集中取組期間と位置づけて、できる限り前倒しして加速化プランと呼ばれている様々な取組を実施することなどが明記されており、「こども誰でも通園制度(仮称)」が令和8年度(2026年度)から全国的にスタートする予定とされています。「こども誰でも通園制度(仮称)」とは、保護者の方の就労要件などを問わず、こどもを誰でも保育所などの施設に通わせることができる新たな制度であり、「こども誰でも通園制度(仮称)の試行的事業」では、本格的な実施に先駆け、普段保育所などに通っていない家庭のこどもを対象に、実施施設において月10時間以内の定期的な預かりを行うことで、集団生活の機会を通じたお子さんの育ちを応援するとともに、保護者の子育てに関するお悩みに対してアドバイスなどを行います。 「子どもの貧困対策の推進に関する法律の一部を改正する法律」の公布(令和6年(2024年)6月)  超党派の議員立法による「子どもの貧困対策の推進に関する法律の一部を改正する法律」が公布され、子どもの貧困対策の推進に関する法律の名称が「こどもの貧困の解消に向けた対策の推進に関する法律」に改められるとともに、目的や基本理念の充実等が盛り込まれています。 (2)大阪府の動き 「こども・未来プラン(大阪府次世代育成支援行動計画)後期計画」を策定(平成22年(2010年)3月)  次世代育成支援対策推進法や大阪府子ども条例などに基づく、子ども施策の総合的な計画として、平成22年度(2010年度)から平成26年度(2014年度)までの5か年を計画期間とする「こども・未来プラン(大阪府次世代育成支援行動計画)後期計画」を策定しました。 「大阪府子ども総合計画」を策定(平成27年(2015年)3月)  「こども・未来プラン(大阪府次世代育成支援行動計画)後期計画」の理念を継承しつつ、「子ども・子育て支援新制度」や「子どもの貧困対策」にも対応した計画として、平成27年度(2015年度)から令和6年度(2024年度)までの10年間を計画期間とする「大阪府子ども総合計画」を策定しました。 4ページ (3)計画策定に関する新たな動き 子ども・子育て支援法に基づく「基本指針」の改正  令和6年に子ども・子育て支援法に基づく「基本指針」が改正され、市町村計画の作成に関する事項について、令和7年度から始まる第3期計画に関連施策の動向等を反映させるため、主に以下の内容が規定されました。 【改正の概要】 1.家庭支援事業の新設・拡充及び利用勧奨・措置に関する事項の追加  基本指針に 新設した事業の位置づけ等を行うとともに、市町村子ども・子育て支援事業計画において、家庭支援事業の量の見込み(事業需要量)を設定する際には、利用勧奨・措置による提供も勘案の上、設定すること等を規定。 2.こども家庭センター及び地域子育て相談機関に関する事項の追加  市町村子ども・子育て支援事業計画の任意記載事項として、こども家庭センターと地域子育て相談機関の設置に努めることや、これら機関の連携を図ること等を規定。 3.こどもの権利擁護に関する事項の追加  都道府県子ども・子育て支援事業計画の基本的記載事項として、①児童相談所等が適切に意見聴取等措置をとること、都道府県が意見表明等の支援やこども権利擁護に向けた必要な環境の整備を行うことについて規定。 4.その他所要の改正   基本指針に規定している計画の更新等を踏まえ所要の改正を行う。 「子ども・子育て支援法等の一部を改正する法律」の成立(令和6年(2024年)6月)  こども未来戦略の「加速化プラン」に盛り込まれた施策を着実に実行するため、ライフステージを通じた子育てに係る経済的支援の強化、すべてのこども・子育て世帯を対象とする支援の拡充、共働き・共育ての推進に資する施策の実施に必要な措置を講じるとともに、こども・子育て政策の全体像と費用負担の見える化を進めるための子ども・子育て支援特別会計を創設し、児童手当等に充てるための子ども・子育て支援金制度を創設することが規定されました。 【法律の概要】 1.「加速化プラン」において実施する具体的な施策 (1)ライフステージを通じた子育てに係る経済的支援の強化 ①児童手当について、(1)支給期間を中学生までから高校生年代までとする、(2)支給要件のうち所得制限を撤廃する、(3)第3子以降の児童に係る支給額を月額3万円とする、(4)支払月を年3回から隔月偶数月の年6回とする抜本的拡充を行う。 ②妊娠期の負担の軽減のため、妊婦のための支援給付を創設し、当該給付と妊婦等包括相談支援事業とを効果的に組み合わせることで総合的な支援を行う。 5ページ (2)全てのこども・子育て世帯を対象とする支援の拡充 ①妊婦のための支援給付とあわせて、妊婦等に対する相談支援事業妊婦等包括相談支援事業を創設する。 ②保育所等に通っていない満3歳未満の子どもの通園のための給付こども誰でも通園制度を創設する。 ③産後ケア事業を地域子ども・子育て支援事業に位置付け、国、都道府県、市町村の役割を明確化し、計画的な提供体制の整備を行う。 ④教育・保育を提供する施設・事業者に経営情報等の報告を義務付ける経営情報の継続的な見える化。 ⑤施設型給付費等支給費用の事業主拠出金の充当上限割合の引上げ、拠出金率の法定上限の引下げを行う。 ⑥児童扶養手当の第3子以降の児童に係る加算額を第2子に係る加算額と同額に引き上げる。 ⑦ヤングケアラーを国・地方公共団体等による子ども・若者支援の対象として明記。 ⑧基準を満たさない認可外保育施設の無償化に関する時限的措置の期限到来に対する対応を行う。 (3)共働き・共育ての推進 ①両親ともに育児休業を取得した場合に支給する出生後休業支援給付及び育児期に時短勤務を行った場合に支給する育児時短就業給付を創設する。 ②自営業・フリーランス等の育児期間中の経済的な給付に相当する支援措置として、国民年金第1号被保険者の育児期間に係る保険料の免除措置を創設する。 2.子ども・子育て支援特別会計いわゆる「こども金庫」の創設  こども・子育て政策の全体像と費用負担の見える化を進めるため、年金特別会計の子ども・子育て支援勘定及び労働保険特別会計の雇用勘定育児休業給付関係を統合し、子ども・子育て支援特別会計を創設する。 3.子ども・子育て支援金制度の創設 ①政府は、支援納付金対象費用に充てるため、令和8年度から毎年度、医療保険者から支援納付金を徴収すること、医療保険者は、支援納付金を納付する義務を負うことを定める。 ②医療保険者から毎年度徴収する支援納付金の額の算定方法等を定める。 ③内閣総理大臣は、社会保険診療報酬支払基金に、支援納付金の徴収等の事務を行わせることができることとし、その業務等を定める。 ④政府は、令和6~10 年度までの各年度に限り、支援納付金対象費用の財源について、子ども・子育て支援勘定の負担において子ども・子育て支援特例公債を発行することができることとする。 ⑤附則において支援納付金の導入に当たっての経過措置・留意事項を定める。 6ページ 3.計画の位置づけ (1)法的位置づけ  本計画は、子ども・子育て支援法第2条(基本理念)を踏まえ、同法第61条の規定に基づく「市町村子ども・子育て支援事業計画」に位置づけ、 次世代育成支援対策推進法第8条の規定に基づく「市町村次世代育成支援行動計画」と、 こどもの貧困の解消に向けた対策の推進に関する法律第10条の規定に基づく「市町村こどもの貧困の解消に向けた対策についての計画」を一体的に策定します。   子ども・子育て支援事業計画 今後5年間の計画期間における幼児期の教育・保育及び地域の子育て支援事業の量の見込み(ニーズ量)を求め、その確保の内容及び方策について定めたもので、年度ごとに数値を示した計画です。 次世代育成支援行動計画 少子化の流れを変え、次代を担うすべての子どもが健やかに生まれ、育成されるとともに、子育てに喜びを感じる社会をめざし、策定された子育て支援の行動計画です。 こどもの貧困の解消に向けた対策についての計画 ひとり親家庭の支援を含めたこどもの貧困の解消に向けた対策の総合的な推進を図るための計画です。 (2)他の計画等との関連  本計画は、福祉をはじめ保健、教育、労働、生活環境など市政の各分野にわたる総合的な計画として位置づけられ、「第5次貝塚市総合計画」を上位計画として、次代を担う子どもを産み育てる家庭を地域で支えあい、子どもの心身の健全な育成を図る環境整備を推進するための部門別計画となるものです。  また、大阪府の「大阪府子ども総合計画(本体計画)」における次世代育成支援の取組の考え方を踏まえながら、平成19年(2007年)4月に制定された「大阪府子ども条例」に基づく計画として位置づけ、「第4次貝塚市地域福祉計画」等の関連計画との調和を図ります。 7ページ (3)SDGsとの関連  SDGs(Sustainable Development Goals)とは、平成27年(2015年)9月の国連サミットで採択された令和12年(2030年)までの国際目標です。国の定める「SDGs実施指針改定版(令和元年(2019年)12月20日)」において、地方自治体には、国内において「誰一人取り残されない」社会を実現するために「様々な計画にSDGsの要素を反映すること」が期待されています。  本計画の推進にあたっては、SDGsを意識して取り組み、地域や企業、関係団体などと連携しながら、子どもや子育て家庭の最善の利益が実現される社会を目指します。 4.計画の期間  本計画の計画期間は、令和7年度(2025年度)から令和11年度(2029年度)までの5年間とします。  また、5年間の計画期間中であっても、様々な状況の変化により見直しの必要性が生じた場合、適宜、計画の見直しを行っていくものとします。 8ページ 5.計画の策定体制 (1)子ども・子育て支援に関するニーズ調査の実施  本計画の策定にあたり、市民の皆様の子育て支援に関する実態、ご意見・ご要望などの必要な情報を得るため、子ども・子育て支援に関するニーズについての動向分析等を行い、本市の現状及び今後の子ども・子育て支援における課題を整理するとともに、事業計画における需要量の見込みを設定する上での基礎資料とすることを目的としたアンケート調査を実施しました。   (2)貝塚市子ども・子育て会議での協議  貝塚市子ども・子育て会議規則に基づき、「貝塚市子ども・子育て会議」を設置し、ニーズ調査の検討をはじめ、本市の子ども・子育て支援の現状と課題を把握し、各委員の意見を聴取し、計画策定に努めました。   (3)市民説明会及びパブリックコメントの実施  本計画(素案)に対し、市民からの意見を伺うため、市民説明会を開催するとともに、市ホームページや市内の公共施設等で本計画(素案)を公開し、素案に対する市民の意見を募集するパブリックコメント(意見公募)の実施を通じ、本計画への反映に努めました。