第4章 住民同士で支え合い安心して暮らせるまちづくり 1 地域支援体制の充実 ◆地域包括ケアシステムの姿 ? (1)情報の共有化  支援を必要とする人に必要なサービスを届けるためには、フォーマルサービス*やインフォー マルサービス*を活用することになりますが、効率的な支援のためには個人情報の共有が必要不 可欠となり、個人情報の保護が重要な課題となっています。  本市においては、情報の守秘義務について拡大地域ケア会議*・地域ケア会議*の参加者と確 認し、個人情報の取扱いに十分留意したうえで支援に役立てるよう、関係者間で情報共有に努 めています。 (2)高齢者セーフティネットの構築  ひとり暮らしや夫婦のみの高齢者世帯が住み慣れた地域で安心して暮らし続けられるよう、 地域包括支援センター*、社会福祉協議会*、警察・消防署等の関係機関と連携して、高齢者の 孤立を防ぎ、緊急時にも対応できるような仕組みが必要です。例えば、持病等の緊急時必要な 情報を確保するため、緊急時連絡票を配付し、地域包括支援センターや民生委員・児童委員、 町会・自治会、老人クラブ、地域のボランティア*団体等と連携を図ることなどが考えられます。  支援を必要とする高齢者の状況把握や安否確認を実施し、地域における高齢者セーフティネ ット*の構築を推進します。 (3)福祉教育と福祉に対する意識の醸成の推進  高齢者福祉に関する制度改正の際や、市民から情報提供のニーズがあれば、コスモス市民講 座*において介護保険制度の周知や福祉サービス等について説明するなど、市民の福祉に対する 意識を高め、さらに市政への理解を深めてもらえるよう取り組んでいきます。  また、地域住民同士で交流する意識を醸成するため、公立認定こども園や公立幼稚園におい て、運動会等の行事に地域の高齢者を招いたり、昔の遊びを教えてもらったりすることで、子 どもと高齢者との世代間交流を促進します。学校教育においても、総合的な学習の時間等の機 会を捉え、様々な地域福祉についての学習や体験学習に取り組み、福祉教育を推進していきま す。 ? (4)地域ケア会議・拡大地域ケア会議の推進  地域ケア会議*とは、高齢者個人が抱える課題の解決を通して、地域のネットワークの構築、 地域課題の発見、地域づくり・資源開発、政策形成等の重層的な機能を有しており、地域の実 情に応じた地域包括ケアシステム*の実現をめざすうえで重要な取組みとなります。  個別ケースを多職種で検討することにより、高齢者の自立支援に資するケアマネジメント*支 援を行うとともに、個別支援の取組みを積み重ね共有することにより、高齢者を支援する地域 のネットワークの構築や、個別支援を地域課題の把握につなげていく取組みを推進します。さ らに、自立支援・重度化防止につながるサービス利用を促進するため、介護支援専門員(ケア マネジャー)*等への情報提供や、地域団体との情報交換に取り組んでいきます。  さらに、本市独自の取組みとして、上記の地域ケア会議に加えて、高齢者だけでなく子ども や障害者等も含めた市民の課題を、地域で生活する市民の声によって拾い上げる「拡大地域ケ ア会議*」を開催しています。各町会・自治会単位で、民生委員・児童委員、地域包括支援セン ター*、コミュニティソーシャルワーカー*等をメンバーとしており、町会・自治会レベルで把 握した個別ケース(困難事例等)の情報を拡大地域ケア会議に集約することにより、迅速に個 別ケースの検討と地域課題の把握を行います。       ◆地域ケア会議   令和3年度 令和4年度 令和5年度 令和6年度 令和7年度 令和8年度   (実績) (実績) (見込み) (見込み) (見込み) (見込み) 地域ケア会議(個別)(回) 14 14 14 20 20 20 地域ケア会議(地域)(回) 0 0 0 3 3 3 地域団体との情報交換(回) 25 116 150 200 200 200         ◆拡大地域ケア会議   令和3年度 令和4年度 令和5年度 令和6年度 令和7年度 令和8年度   (実績) (実績) (見込み) (見込み) (見込み) (見込み) 拡大地域ケア会議 (個別)(回) 337 347 350 356 362 368 ? ◆「地域ケア会議*」を活用した個別課題解決から地域包括ケアシステム*実現までのイメージ          ◆「拡大地域ケア会議*」概要図 (5)重層的支援体制の整備  本市では、近年の複雑化・複合化*している地域生活課題に対応するために、分野横断的に相 談を受け止め、適切な支援・サービスにつなげる重層的支援体制を整備しました。重層的支援 体制は、課題を受け止める「相談支援」、地域とのつながりを回復する「参加支援」、世代や属 性を超えて交流できる場を整備する「地域づくりに向けた支援」を柱とし、「アウトリーチ等を 通じた継続的支援」、相談を調整する「多機関協働事業」を一体的に実施するもので、市だけで なく、社会福祉協議会*や各種関係機関、地域団体の協働のもと構築されます。住民一人ひとり の課題にアプローチできる拡大地域ケア会議*の取組みを活用し、すべての住民が必要な支援を 受けられる体制づくりを進めます。       「第4次貝恷s地域福祉計画*」より ? (6)小地域ネットワーク活動の展開と活動内容の拡大  地域住民、ボランティア*、地区福祉委員、民生委員・児童委員等で構成する小地域ネットワ ーク*は、専門職、関係機関と連携して、地区福祉委員会の小地域福祉活動として活動を展開し ており、あいさつ運動やいきいきサロン、ふれあい喫茶等の地域の活動を通じて、日常的な交 流が広がっています。さらに、地域包括支援センター*や事業所と地域が連携した取組みも増え てきています。  一方で、担い手の高齢化・固定化等の課題があり、活動を継続的かつ効果的に進められるよ う、新たな担い手の発掘と育成に努める必要があります。  今後、小地域ネットワーク活動を幅広い支え合いの活動として展開していくために、地区福 祉委員会等との連携を図ります。  ? 2 高齢者が生活しやすいまちづくりの推進   (1)高齢者に配慮したまちづくり  「高齢者、障害者等の移動等の円滑化の促進に関する法律*」をはじめ、大阪府の「福祉のま ちづくり条例」等に基づき、鉄道等の駅舎や駅前広場、道路、公園施設等の公共公益施設の整 備を促進し、民間施設の整備について、引き続き指導等を行っていきます。  また、国の「移動等円滑化の促進に関する基本方針」(令和3年4月改正)に基づき、高齢 者や障害者等、駅利用者の利便性向上のため、JR東貝塚駅のバリアフリー化を図りました。 本市では引き続き、南海二色浜駅、JR和泉橋本駅において、駅前広場や周辺道路等のバリア フリー化を図り、高齢者が移動しやすい環境づくりを進めていきます。 (2)地域の需要に見合った公共交通網の整備  現在、水間鉄道株式会社が本市の補助を受け「は〜もに〜ばす」を運行しており、さらに地 域の実情に応じた課題や需要に対応するため、必要に応じ貝恷s地域公共交通活性化協議会等 を開催して、障害者や高齢者をはじめ、誰もが安全・快適に移動できる公共交通ネットワーク の構築をめざします。 (3)高齢者の住まいの確保  高齢者が住み慣れた地域において、安心して暮らすためには住まいの確保は重要です。高齢 者の多様な住まいの受け皿になっている有料老人ホームやサービス付き高齢者向け住宅*、高 齢者に対する賃貸住宅など、関係機関と連携を緊密に行い情報の収集と市の窓口での情報提供 を行います。    参考:有料老人ホーム・サービス付き高齢者向け住宅整備状況(令和5年10月末現在) 名  称 箇所数 定員数 (床数) 有料老人ホーム  19  747 サービス付き高齢者向け住宅  10  262    計  29  1009 ?   ◆軽費老人ホーム  入所者の生活相談や、入浴、食事の提供や緊急時の対応を行う施設です。入所者が介護を 必要とする状態になった場合は、介護保険サービスを利用し、できる限り自立した生活が送 れるように配慮します。本市には令和5年10月末時点で2か所整備されています。     ◆養護老人ホーム     環境上の理由及び経済的な理由により在宅での生活が困難な方に対し、入所措置を行い、 安心して生活できる場を提供します。本市には令和5年10月末時点で1か所整備されていま す。 ? 3 高齢者の安全・安心の確保   (1)防火・防災・感染症対策の推進  高齢化の進展を見据え、施設入所高齢者等を対象にした防火訓練、講習会を実施し、防火意 識の普及啓発に努めます。  災害時に自力で避難することが困難な高齢者等を対象として、「個別避難計画」の作成を推進 し、安否確認や避難支援を円滑に行えるよう取り組みます。また、避難行動要支援者を含めた 防災訓練や老人クラブ等に対する防災講座の実施を通じて防災意識の高揚を図ります。  また、「貝恷s新型インフルエンザ等対策行動計画」に基づき、公共施設や介護サービス提供 事業所、高齢者が集う場等での感染症対策の周知を図り、新型コロナウイルス感染症も踏まえ た、感染症予防対策の推進に努めます。 (2)防犯対策  引き続き、市、警察、貝恷s防犯協議会、貝恷s事業所防犯協議会、事業者、市民が一体と なり、犯罪のない「安全なまち・貝悒の実現をめざして取組みを推進します。  警察や防犯協議会等の関係機関や防犯ボランティア*と連携を図りながら、地域安全パトロー ルの充実やメールによる携帯電話等への地域安全情報の発信等に積極的に取り組むとともに、 各種団体・個人が参画する地域安全センターの活性化を推進し、地域ぐるみの防犯意識の向上 と防犯体制の充実を図ります。 (3)消費者啓発  高齢者を狙った電話勧誘や詐欺等の消費者被害を防止するため、地域や団体に本市の消費生 活センターの相談員を派遣したり、市内各所のパンフレットスタンドや市民が集まる商業施設 等に啓発リーフレットを配架したりすることで消費生活センターを案内するとともに、日常生 活自立支援事業*・成年後見制度*の周知、利用促進に努めます。また、消費生活センターにお いて、多重債務に関連する生活の相談にも対応していきます。 ? 4 高齢者の尊厳の確保   (1)日常生活自立支援事業の推進  認知症やその他の疾患で、心身機能の低下や判断能力が不十分になっても、住み慣れた地域 で自分らしい生活を送ることができるよう、本人の意思を尊重し、その意思をできる限り実現 するための支援を行います。また、日常生活自立支援事業をはじめ、福祉サービスや制度等の 情報の周知啓発に努め、正しい理解と利用につなげます。 (2)成年後見制度の利用促進  高齢、障害、認知症などにより、ひとりでの判断や意思決定、金銭管理が難しい人でも、地 域で尊厳ある本人らしい生活を継続できるよう支援するため、「第4次貝恷s地域福祉計画*」 に包含して「貝恷s成年後見制度利用促進計画」を策定しています。この計画に基づき、制度 利用が必要な誰もが権利擁護支援を受けられるよう、制度の広報・啓発や、相談支援、関係者 のコーディネート等を行う中核機関を設置し、地域連携ネットワークの構築を進めます。  また、市民後見人を養成するとともに、市民後見人の活用や福祉の事務に関して専門的な知 識・能力・体制等を備えた社会福祉協議会*等の法人を成年後見人等として選任できる法人後見 制度の導入についても引き続き検討していきます。 (3)高齢者の孤立死防止  身体の疾患や認知症等により多様な医療・介護・福祉サービスの利用や支援が必要な状態に あるにもかかわらず、近隣住民や友人・知人から孤立し,必要な支援を受けずに暮らす高齢者 が地域には潜在しています。このような孤立状態にある高齢者を早期に把握し、必要な医療・ 介護・福祉サービスの利用や公的機関以外の社会資源による支援に結び付けるために、近隣住 民や民生委員・児童委員、各地域の老人クラブ、社会福祉協議会、シルバー人材センター*等と 連携して高齢者を見守る事業を推進していきます  また、認知症以外に身体機能の低下や精神機能の障害(特にうつ病)により「閉じこもり」 状態となった高齢者の自殺を予防する観点から、周囲の人が自殺の危険を示すサインに気づき、 適切な対応ができるように、市民全般を対象としたゲートキーパー*養成研修を引き続き開催し ます。 ? (4)生活困窮状態にある高齢者の支援  いわゆる「制度の狭間」に陥ることが多い生活困窮者の多様で複合的な課題を解きほぐし、 自立に導くためには、地域包括支援センター*や自立相談支援機関をはじめ、地域の様々な支援 機関が連携し、包括的に対応することが重要となっています。  そのため、生活困窮状態にある高齢者に対しては、生活困窮者自立支援法*に定める各種事業 やその他の支援制度に適切につなぐことができるよう、相談内容を傾聴し、支援機関と情報を 共有することで、地域における支援体制の構築に取り組みます。 5 高齢者虐待の防止  近年、高齢者虐待の通報件数が増加しています。高齢者虐待防止法*の趣旨を踏まえ、市民や 介護保険事業所等への啓発、相談窓口の周知に努めます。また、地域包括支援センターを中心 に、関係団体や行政機関等が連携し、通報体制の確立、虐待の防止及び早期発見、養護者の支 援について適切な対応を行う、高齢者虐待防止ネットワークの構築を推進します。  また、事業者連絡会*等において、地域包括支援センター職員や介護保険事業者の従事者に向 けた虐待の実態把握や、対応技量向上のための研修会等を実施していきます。 1