第1章 計画策定に関する基本方針 1 計画策定の背景と目的  平成12(2000)年4月からスタートした「介護保険制度」は、発足から令和5年で23年が経 過し、介護が必要な高齢者の生活の支えとして定着、発展してきました。  いわゆる団塊の世代*がすべて75歳を迎える令和7(2025)年が近づくなかで、さらにその 先を展望すると、団塊ジュニア世代*が65歳以上となる令和22(2040)年に向け、生産年齢人 口の減少が加速し、令和24(2042)年には高齢者人口がピークを迎えるとされています。  本市においても、高齢者人口は増加傾向にあり、令和7(2025)年には高齢化率は28.3%ま で上昇することが見込まれており、さらに、令和22(2040)年には、高齢化率が39.2%に達す ることが想定されています。  このたび策定する「貝恷s高齢者福祉計画・第9期介護保険事業計画(以下、「本計画」また は「第9期計画」という。)」では、こうした状況を踏まえ、これまでの取組みを基礎としなが ら、健康寿命*を延伸するサービスを充実させるとともに、医療・介護が必要な状態になっても、 できる限り住み慣れた地域で自分らしい暮らしを安心して続けられるよう、「医療」「介護」「住 まい」「介護予防」「生活支援」を一体的に提供する「地域包括ケアシステム*」のさらなる深化・ 推進をめざすものとします。                                            ※文中にアスタリスク(*)を付けている文言の説明は、巻末の用語解説に掲載しています。? 2 計画の位置づけ  本計画は、効率的・効果的に高齢者の福祉サービス及び介護サービスが提供できるよう、老 人福祉法に基づき策定する「市町村老人福祉計画」と、介護保険法に基づき策定する「市町村 介護保険事業計画」を一体的に策定するものです。   3 計画の期間  上記の法的位置づけに基づき、本計画は、計画期間を令和6(2024)年度から令和8(2026) 年度までの3か年とし、いわゆる団塊ジュニア世代*が65歳以上となる令和22(2040)年を見 据え、中長期的な視野に立ち、サービス・給付・保険料の水準の推計と、高齢者施策の展開を 図ります。     ? 4 計画策定体制  本計画は、関係市民団体の代表を含む市民・被保険者代表、医療・福祉関係の有識者等22名 の委員で構成する「貝恷s介護保険事業計画等推進委員会」において、各関係者の意見を反映 させ、策定しました。  また、策定作業を円滑に進めるため、推進委員の中から11名の専門委員を選出し、「事業計 画等策定部会」を構成し、専門的事項や諸課題の検討等、実質的な作業はこの部会において行 いました。  策定過程においては、大阪府主催の説明会に参加し、作成上の技術的事項における助言等を 得るとともに、大阪府が策定する各種計画との整合性をとるために、調整及び連携を図りまし た。  その他、より多くの市民、被保険者の意向を計画に反映するため、介護予防・日常生活圏域 ニーズ調査(以下、ニーズ調査という。)、在宅介護実態調査及びサービス提供事業所向け調査 (詳細はP34以降を参照)やホームページ等を利用したパブリックコメント*等を実施し、その 結果に基づいて計画策定にあたりました。   ◆計画の策定体制   ? 5 計画の評価体制  高齢者福祉計画・介護保険事業計画は策定するだけではなく、計画の推進をするなかで、計 画目標の達成状況、進捗状況の評価・検証と、その問題点や改善点の計画へのフィードバック を期間中に随時実施していくことが重要です。計画のPDCA(作成・実施・評価・見直し) を推進するために、地域における共通の目標を設定し、関係者間で目標を共有するとともに、 庁内関係課や地域包括支援センター*、社会福祉協議会*等との連携を図り、事業計画の分析、 並びに高齢者福祉サービスの現状分析等を行い、定期的に推進委員会等において、計画の評価 を行っていきます。加えて、国の保険者機能強化推進交付金等*の評価結果も評価に活用してい きます。  上記を踏まえ、地域の実情に応じた目標を設定し、各年度において計画の進捗状況を評価す るとともに、新たな取組みにつなげていきます。   6 他の計画等との関係  本計画は、「第5次貝恷s総合計画*」及び「貝恷s強靭化地域計画*」並びに「第4次貝恷s 地域福祉計画*」を上位計画として策定されました。その他の関連計画とも整合性を図りながら 推進していきます。 ◆福祉分野における本計画の位置づけ   ? 7 SDGsの視点を踏まえた計画  SDGs(Sustainable Development Goals)とは、平成27(2015)年9月の国連サミットで 採択された令和12(2030)年までの国際目標です。国の定める「SDGs実施指針改定版(令 和元年12月20日)」において、地方自治体には、国内において「誰一人取り残されない」社会 を実現するために「様々な計画にSDGsの要素を反映すること」が期待されています。本計 画で定める施策を推進することは、SDGsが定めるゴールとつながるものです。     ◆高齢者支援に関する目標       ? 8 日常生活圏域の概要 (1)日常生活圏域の設定  日常生活圏域とは、高齢者が住み慣れた地域で生活を継続しながら、多様なサービスが受け られるよう、地理的条件、人口、交通事情その他の社会的条件、介護サービスを提供するため の施設の整備状況等を総合的に勘案して定める区域です。  本市では、第3期介護保険事業計画において、基本単位である小学校区を3地区に区分し、「浜 手」「中央」「山手」の3つの日常生活圏域を設定しました。  第9期計画では、引き続き日常生活圏域を3圏域(11小学校区)とし、各圏域の地域課題を 把握しながら、生活支援体制整備やサービスの充実に努めるとともに、地域住民が様々なサー ビスの担い手として参加し、コミュニティ*の再生や新たな公共空間の形成を促進する取組みを 図ります。    ◆貝恷sの日常生活圏域人口等 日常生活 圏域 小学校区 総人口 (人) 65歳以上 人口(人) 高齢化率 (%) 認定者数 (人) 65歳以上 人口に対す る認定者数 の割合(%) 浜手圏域 @ 津田 3,468 1,032 29.8 268 26.0 A 北 5,933 1,952 32.9 489 25.1 B 西 13,916 3,514 25.3 839 23.9 C 二色 3,907 1,006 25.7 140 13.9 浜手圏域合計 27,224 7,504 27.6 1,736 23.1 中央圏域 D 東 10,827 2,971 27.4 731 24.6 E 中央 13,737 3,404 24.8 779 22.9 F 南 11,790 3,381 28.7 803 23.8 中央圏域合計 36,354 9,756 26.8 2,313 23.7 山手圏域 G 木島 9,649 3,201 33.2 734 22.9 H 東山 4,426 292 6.6 49 16.8 I 永寿 1,755 853 48.6 218 25.6 J 葛城 3,240 1,174 36.2 269 22.9 山手圏域合計 19,070 5,520 28.9 1,270 23.0 全   市 82,648 22,780 27.6 5,319 23.3  ※令和5(2023)年10月1日現在 ? ◆貝恷sの日常生活圏域イメージ     ? (2)日常生活圏域ごとの状況(介護予防・日常生活圏域ニーズ調査結果より) @ 高齢者の状態像 高 齢 化 率 高 齢 者 の み 世 帯 リ ス ク 判 定 該 当 者 割 合 外 出 を 控 え て い る 理 由 総 括  高齢化率は2番目に高く なっており、高齢者のみ世 帯は中央圏域と同じく 63.2%で、そのうち高齢者 単身世帯は24.0%となって います。他の圏域に比べて、 閉じこもりリスクは低くな っていますが、外出を控え ている理由として、「足腰な どの痛み」が多くなってい ます。外出を促すために、 移動支援等のニーズがある と考えられます。  3つの圏域のなかで最も 高齢化率は低くなっていま すが、高齢者のみ世帯は浜 手圏域と同じく63.2%で、 そのうち単身世帯は24.0% となっています。口腔機能 と運動器機能の低下リスク が他の圏域より高くなって おり、高齢者の身体機能維 持への取組みが必要である と考えられます。  高齢化率が最も高いです が、高齢者のみの世帯の割 合は他の圏域よりも少なく なっています。認知機能の 低下と転倒のリスクが他の 圏域に比べて高くなってお り、介護予防のニーズが高 いと考えられます。また、 閉じこもりのリスクが高 く、外出を控えている理由 として、「交通手段がない」 や「外での楽しみがない」 が他の圏域と比べて多いこ とから、移動支援や地域活 動の充実など、外出を促す 取組みが必要です。 A 地域の生活について 地 域 活 動 に 参 加 し た い 人 会・グ ルー プへ の参 加状 況 ボラ ンテ ィア が活 発だ と 思う 人 在宅 生活 を 続け やす いと 感じ る人 地 域 で 不 足 し て い る も の 総 括  各種地域活動について、 他の圏域に比べて参加率が 高くなっており、ボランテ ィア活動も活発であること がわかります。在宅生活を 継続しやすいと答えている 人は多いですが、飲食店や 交通機関へのニーズは高く なっています。  地域活動へ参加したい人 は、老人クラブを除き、他 の圏域に比べて少なくなっ ています。運動ができる場 が不足しているという意見 が他の圏域に比べて高くな っていることから、身体を 動かす地域活動へのニーズ が高いと考えられます。  地域活動への参加割合は 2番目に多くなっています が、在宅生活の続けやすさ については、他の圏域より も低くなっています。地域 で不足しているものとし て、買い物をする場や交通 機関が他の圏域を大きく上 回っていることから、移動 支援や訪問販売などのサー ビスが求められていること がわかります。 9 第8期計画の振り返り  第8期計画で実施した施策(事業)について、数値目標の達成状況や取組みのプロセスに基 づき、以下の3段階の評価尺度により評価し、それぞれに該当した取組みの数を施策の方向ご とに集計しました。また、成果・改善がみられた取組み及び不十分であった取組みは以下のと おりです。  なお、「第5章 介護サービスの充実と質の向上」のうち、「(2)介護保険サービスの現状と 事業量推計」については、介護保険サービスの量の見込みであるため、本計画の第7章に振り 返りを記載しています。 施策の方向 取組数 評価 A B C 第2章 地域共生社会実現のための地域包括ケアシステム* の深化・推進 49 1 46 2 第3章 介護予防・生きがいづくりの推進 9 0 9 0 第4章 高齢者の尊厳に配慮したケアの推進 6 0 6 0 第5章 介護サービスの充実と質の向上 2 0 2 0 合計 66 1 63 2   ? 10 第9期計画の国の基本指針について (1)介護サービス基盤の計画的な整備 @ 地域の実情に応じたサービス基盤の整備 ? 第9期計画においては、中長期的な人口動態等を踏まえたサービス需要の見込み等の適切 な把握によって、介護サービス基盤を計画的に確保していくことが必要です。 ? 医療・介護のニーズを併せ持つ高齢者の増加に対し、サービス需要や在宅医療の整備状況 も踏まえ、医療・介護の連携強化と効率的・効果的な提供を図ることが重要です。 ? 施設サービス、居住系サービス、地域密着型サービス*をバランス良く組み合わせた介護 サービス基盤の確保においては、周辺保険者における需要や都道府県等との連携が求めら れます。   A 在宅サービスの充実 ? 定期巡回・随時対応型訪問介護看護*や小規模多機能型居宅介護*、看護小規模多機能型居 宅介護*の3サービスをはじめとした、小地域内でのサービス提供により一人ひとりの状 態の変化に柔軟に対応し得る地域密着型サービスのさらなる普及の検討が重要です。 ? 居宅要介護者の様々な介護ニーズに柔軟に対応できるよう、複数の在宅サービス(訪問や 通所系サービスなど)を組み合わせて提供する複合型サービスの整備を推進することが重 要です。 ? 居宅要介護者を支えるための、訪問リハビリテーション*等や介護老人保健施設*による在 宅療養支援の充実を進めていくことが重要です。   (2)地域包括ケアシステムの深化・推進に向けた取組み @ 地域共生社会の実現 ? 地域の多様な参画、連携を通じた「地域共生社会」の実現をめざすことが重要です。 ? 地域の中核を担う地域包括支援センター*においては、体制や環境の整備を図ることによ って業務負担の軽減と質の確保に取り組むことに加え、地域共生社会の実現に向けて障害 者福祉や児童福祉等の他分野との連携を促進することが重要です。 ? 認知症*については、引き続き認知症施策推進大綱*に基づく「共生」と「予防」の両輪で の施策の推進が必要です。さらに、令和5(2023)年6月14日に、共生社会の実現を推進 するための認知症基本法(以下、「認知症基本法」という。)が可決され、認知症の人が尊 厳を保持し、希望を持って暮らすことができるよう、施策を総合的に推進することがより 一層重要となります。 ? 介護予防・日常生活支援総合事業については、実施状況等の検証を行うとともに、充実化 に向けて集中的に取り組んでいくことが重要です。 ? A 医療・介護情報基盤の整備 ? 地域包括ケアシステム*の深化・推進にあたり、医療・介護分野でのDX(デジタルトラ ンスフォーメーション)、患者・利用者自身の医療・介護情報の標準化、情報基盤の一体 的な整備を進め、医療・介護関係者間のデジタル基盤での情報共有・活用が重要です。   B 保険者機能の強化 ? 地域包括ケアシステムの深化・推進にあたっては、保険者機能を強化することが重要です。 保険者機能強化推進交付金等*が保険者機能の強化に一層資するものとなるよう、令和5 (2023)年度から評価指標の見直しが行われています。 ? 介護給付適正化事業については、保険者機能強化推進交付金等の実効性を高めるため、適 正化主要5事業の再編が検討されています。保険者の事務負担軽減を図りつつ、効率的・ 効果的な事業の実施に向けた、事業の重点化・内容の充実・見える化を行うことが重要で す。 (3)地域包括ケアシステムを支える介護人材確保及び介護現場の生産性向上 ? 令和24(2042)年にピークを迎える高齢者人口に対し、生産年齢人口の急速な減少が見込 まれるなか、地域包括ケアシステムを支えるために介護人材の確保と介護現場の生産性向 上の取組みを一体的に進めていくことが重要です。 ? 介護人材の確保に向けては、処遇改善、人材育成支援、離職防止、魅力向上、外国人材の 受け入れ環境整備等の取組みの総合的な実施が必要です。 ? 深刻化する介護人材不足への対応として、介護現場の生産性向上が喫緊の課題となってお り、引き続き介護現場における革新を進めるほか、適切な支援につなぐワンストップ窓口 の設置等様々な支援・施策の総合的な推進が重要です。 ? 参考:介護保険制度改正の経緯       1