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はじめに
　本調査は、岸和田市・貝塚市新斎場整備基本計画をもとに、新斎場を整備・運営するにあたり、業務の内容を整理するとともに、民間活用による事業方式について調査し、様々な整備手法を比較検討することで、最適な事業方式を選定することを目的に実施した。


１．既存施設の現状
（１）岸和田市の既存施設の概要
　既存施設は、令和３年度には稼働年数が50年を超え、施設は火葬炉設備を含み全体的に老朽化しており、修繕工事や改修工事を実施していても劣化に歯止めがかからない状態となっている。施設は、他市の新設斎場と比較すると、待合ホール・収骨室等の諸室がなく簡素なつくりとなっており、超高齢社会の進展を受け、現在の火葬能力では今後増大する火葬需要への対応が困難であることが予想されている。

（２）貝塚市の既存施設の概要
　令和３年度には稼働年数が約40年となり、設備や施設の大規模修繕が必要な状態である。
　　　　　　　　　　

２．新斎場整備事業概要
（１）基本的な考え方
・最後のお別れの場にふさわしい施設	
・故人を偲び、悲しみを癒し、慈しみを感じる施設
・人と環境にやさしく、誰からも愛され大切にされる施設
・将来の火葬需要に対応した施設	
・維持・管理費が低コストの施設	
・災害時にも対応可能な施設

（２）施設整備・運営方針
　施設整備は、次に示す方針の下で立案する。
・無煙、無臭化を図る等、機能と設備に最新の技術を取り入れ、環境保全を最重点に考える。
・周辺の自然環境と調和のとれた建物とする。
・建物は、全体に明るく清潔であると同時に、内部が厳粛な雰囲気をもったものとし、参列者が来場から収骨後の退場までスムーズに利用できるように配慮する。
・火葬から収骨までの時間の流れの中で静的な雰囲気を保つと共に遺族のプライバシーが保たれる配置とする。





３．新斎場の施設概要
（１）基本条件
　本施設に求める基本条件を下記に示す。
　
項目概要所在地岸和田市流木町1092番地の１敷地面積約14,300㎡　用途地域等市街化調整区域　海岸寺山風致地区　宅地造成工事規制区域防火指定指定なし建ぺい率40％容積率200％建物面積約3,099㎡概要火葬炉
施設概要
火葬部門：
待合部門：
管理部門：人体炉８基・動物炉１基

エントランスホール、告別室・収骨室、霊安室、その他
待合ホール、待合室、給湯室、キッズコーナー、トイレ等
炉室、機械室、残灰室、台車庫、電気室、空調機械室、事務室，監視室、更衣室、倉庫等
（２）諸室等の要件
・待合室の考え方
　最新の火葬炉設備の導入による火葬時間の短縮（60～80分程度）や、家族葬の増加等により、昨今、告別後～収骨までの時間を待合室で過ごす遺族が増加傾向にある。そのため、本施設では、火葬の重複が最大６件であることを勘案し、待合室を６室設置することとする。

・多目的室の考え方
　近年増加傾向にある、直葬や市に申し込んで行う簡易な葬儀、お別れを行う場として対応可能なプライベート空間を備えることとする。なお、ご遺体を前日に施設に搬入することも可とするが、通夜や遺族の夜間付き添いは想定せず、火葬の前に１時間程度使用可能な多目的室を想定する。

・告別室・収骨室の考え方
　本施設には、炉数２基に対して１室配置を基本とし、計４室を備えるものとする。なお、モデルプランでは、告別室及び収骨室を併用する計画とした。

・動物葬の考え方
　動物炉１基を備え、動物専用の告別・収骨室は設置しない。必要に応じて炉室まで遺族の立ち入りを許可することも可能な配置とする。



４．事業手法の検討
（１）事業手法の抽出
　本事業において導入が考えられる事業手法は次のとおりである。
事業方式資金
調達火葬炉施設運営施設の所有設計施工維持管理設計建設建設時運営時従来方式市分離発注分離発注分離発注分離発注分離発注市市従来＋ＤＢＭ＋
指定管理方式市包括発注分離発注分離発注包括発注市市ＤＢＯ方式市包括発注市市ＰＦＩ方式民間包括発注民間市・従来方式
　市が資金調達を行い、施設の設計、建設及び維持管理運営業務を個別に行う分離発注型の方式である。市が直接全面的に関わり、市の意向を反映し事業を進める従来型の方式である。

・従来＋ＤＢＭ＋指定管理方式
　市が資金調達を行い、施設の設計から建設を従来型の分離分割方式で、火葬炉の整備及び維持管理を一体的に性能発注する方式で、施設の維持管理運営を指定管理者制度により包括的に発注する方式である。

・ＤＢＯ方式
　市が資金調達を行い、施設の設計・建設から維持管理運営までを性能発注する方式により、一括して民間事業者が担う方式である。設計・施工者と維持管理・運営者が一体となって互いにノウハウを活用する。

・ＰＦＩ方式
　ＰＦＩ法に基づき、民間事業者の資金と経営能力・技術力を活用し、施設の設計・建設、維持管理運営を一括して民間事業者に行わせる公共事業の調達方式である。資金調達面においては、初期投資部分等を含め、民間がプロジェクトファイナンス手法を用いて行い、市の財政負担を平準化する方式が一般的である。

（２）事業手法の他自治体の状況
　（１）で抽出した事業手法における他自治体の火葬場発注状況は、平成28年度から令和２年度において、従来方式が72カ所、従来＋ＤＢＭ＋指定管理方式が１カ所、ＤＢＯ方式が３カ所、ＰＦＩ方式が８カ所となっている（大手火葬炉メーカー３社へヒアリング※設計中・工事中含む）。従来方式や従来＋ＤＢＭ＋指定管理方式は、小規模施設で採用される傾向があり、平均火葬炉数は4.5基である。一方、ＤＢＯ方式やＰＦＩ方式は、本施設のように比較的規模が大きい施設で採用される事例が多く、平均火葬炉数は9.5基である。また、ＰＦＩ方式では、式場を併設する事例が見られる。

（３）ＶＦＭの算定条件
・内閣府のガイドライン等に基づき、算定条件を設定している。
・事業費は見積りや事例等を用いて算定しており、高止まりを防ぐため、実際の発注までに事業費を精査する必要がある。
・民間活用による削減率は見込むが、入札による落札率は加味されていない。
・ＰＦＩ方式の場合は、地方債を活用しない。

５．総合評価
【本事業において望ましい方式】 はＤＢＯ方式
○ＤＢＯ方式は、設計・建設・維持管理運営業務を包括発注、性能発注することで、企業間連携など民間の創意工夫を発揮して事業全体の効率化を図ることができる。（本斎場は式場を併設しないシンプルな施設であるため、ＰＦＩ方式では民間企業にメリットが出にくいと考えられる。）
○ＤＢＯ方式は、包括的に業務を行い事務効率を図ることで、従来方式や従来＋ＤＢＭ＋指定管理方式に比べ、市担当職員の人件費を削減できる。
○ＤＢＯ方式は、新斎場供用開始までのスケジュールを最も短縮でき、増加する火葬需要にいち早く対応することができる。（ＰＦＩ方式は法に基づく手続きが必要であるため、ＤＢＯ方式に比べ時間を要する。）
○ＤＢＯ方式においても、地元企業の参入を要件化することで、従来方式や従来＋ＤＢＭ＋指定管理方式と同様に、地元企業の参入が可能となる。

総合評価
従来方式△
従来+ＤＢＭ・指定管理方式〇
ＤＢＯ方式◎
ＰＦＩ方式〇

６．ＤＢＯ方式における事業スケジュール
都市計画変更
令和３年度
事業者選定
令和４年度から令和５年度
基本・実施設計
令和５年度から令和６年度
新斎場建設工事
令和６年度から令和８年度
新斎場供用開始
令和８年度
旧施設解体工事
令和８年度